新潟地域・国鉄線への特定都区市内制度導入案

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新潟地域・国鉄線への特定都区市内制度導入案(にいがたちいき・こくてつせんへのとくていとくしないせいどどうにゅうあん)とは、1980年代初頭に、当時の鉄道労働組合日本国有鉄道に、新潟県新潟市、および、その周辺市町へ特定都区市内制度を導入するよう求めた提案のこと。

以下、この提案で適用を求めた国鉄駅が属する地域を便宜的に「新潟地域」とする。

概要[編集]

特定都区市内制度は、1969年に「六大都市」に適用され、1972年には「1970年国勢調査人口が50万人以上の市」(参照)に適用拡大されたが、それ以後は適用拡大がなされていない(ただし、既に適用された都市が市町村合併で市域拡大した場合はその地域にも適用)。

新潟地域での特定都区市内制度導入案が提案された1980年代前半は、国鉄の莫大な赤字の解消に向けて、1980年10月の国鉄再建法成立、1981年からの特定地方交通線(赤字ローカル線)選定、続く国鉄分割民営化など、国鉄のあり方について国民的な議論が盛んだった。

一方で、山陽新幹線1975年3月10日博多駅まで開業、東北新幹線1982年6月23日大宮駅盛岡駅間で、同1982年11月15日に上越新幹線が大宮駅~新潟駅間で暫定開業と、新幹線の整備が各地で進み、容易に高速長距離移動が可能になった地方が増加し、また、飛行機との間で旅客争奪の面も現れるようになっていた。

しかし、1970年代初頭と異なり、既に発券システムの電算化がなされ、特定都区市内制度導入による人件費等のコストダウンよりも市内区間運賃無料化に伴なう減収が大きくなり、国鉄の赤字清算を目指す議論が強い中、鉄労が、1982年11月15日上越新幹線開業にあわせてこの案の導入を目指したが実現せず、その後、1984年3月10日国会においても審議[1]されたが実現に至らなかった。

提案内容[編集]

上越新幹線の開業に伴い旧新津市地区(現秋葉区地区)からの利用客に対して生じる新潟駅まで逆戻り分運賃の改善策として、</br> 鉄道労働組合は、新潟駅を基点として距離計算し、新津駅新潟駅乗車15.2km分を無料化し利用客の負担増を半分に軽減するために特定都区市内駅制度の新潟地区への設定を提唱した。</br> エリア内の乗車経路・乗降車駅の選択によっては在来線特急利用時に運賃が高くなるパターンこそ稀にはあるものの、「新潟駅を中心駅と定め、そこから201km以上の、新幹線を利用する多くの乗車パターン」において、市内区間各駅から新潟駅までの運賃が無料化され、かつ多数ある新潟市内各駅を運賃精算無しで自由に選択し乗り降りできる様にするものである。</br> 基本的に、既存の特定都区市内駅制度と同じ制度である(特定都区市内参照)。</br> ただし、異なる点は以下の通り。

  • 従来の制度と異なる点
    • 新潟市の1980年国勢調査人口は45.8万人(1970年の同人口は38.4万人)で、1972年の拡大時の基準の人口に達していない。
    • 既適用エリアは、1972年当時適用都市である「都区内」「市内」のみとなっていたが、1982年頃当時の新潟市外に立地する亀田駅荻川駅新津駅古津駅東新津駅新関駅まで広がる「新潟地域」への導入を要求。

新潟地域に導入された場合の影響[編集]

当時、同制度が適用されておらず、かつ、1980年国勢調査人口[2]で新潟市より人口の多い市には、千葉市(74.6万人)、岡山市(54.6万人)、熊本市(52.6万人)、鹿児島市(50.5万人)、浜松市(49.1万人)、静岡市(45.8万人)があり、新潟市に導入を認めると、これらの市にもドミノ式に適用を広げないと合理性がない状態であった。

さらに、同提案のように、新潟市外の「新潟地域」の駅まで適用を広げるとなると、既に適用されている都市でも同様に各都市圏全体への拡大を求められる可能性もあった。逆に言えば、これらの都市と共同で、新たな基準の特定都区市内制度の導入を提案すれば、国会での主要な議題ともなったかも知れないが、そのような大きな動きは結局出来なかった。

新潟市内発着の類似制度[編集]

周遊券[編集]

旧国鉄が日本交通公社(現JTB)と提携し、駅内にその窓口があった時代、日本交通公社が独自に企画し国鉄窓口でもJR移行後しばらく販売された「周遊券」「ミニ周遊券」「ワイド周遊券」「ニューワイド周遊券」には「新潟市内 発着」の券が発売されていた。また、新潟鉄道管理局管内の「みどりの窓口」に置かれ配布された、乗車券を入れる紙ケースには「新潟市内発着の乗車券」に関する「新潟市内の範囲の駅名」、「途中下車の規則」が印刷されており、その内容は特定都区市内駅制度の規則と同じであった。

尚、特定都区市内駅制度が設定されていないエリアの「市内発着型周遊券類」として、「函館市内」「千葉市内」「高松市内」発着の券も設定されていたが、いずれも現在は発売されていない。

各種旅行ツアー乗車券[編集]

駅構内・車内掲示された新潟鉄道管理局主催の各種旅行ツアー(日本交通公社が企画したもの)を宣伝するためのポスターや広告チラシには、「主な駅からの料金の表」における新潟鉄道管理局管内の「主な出発地」の駅名が印刷されていたが、新潟に関しては「新潟駅」ではなく、「新潟市内」と印刷されていた。

しかし、JRが日本交通公社との提携を解除し、駅構内からもその窓口が消え、日本交通公社による委託企画乗車券の販売も終わり、平成10年4月1日に周遊券周遊きっぷに変更されたのを機に周遊券制度が変更され「新潟市内 発着」の周遊券は廃止された。更に、ほぼ同時期に、新たにJR東日本新潟支社が主催(びゅうプラザ企画)する各種旅行ツアーの料金表には「主な出発駅からの運賃」または「新潟駅からの差額」として印刷されるようになった。これらの理由もJR側が市内区間運賃減収を嫌う事に起因しているものと考えられる。

政令指定都市との関係[編集]

特定都区市内制度と指定都市制度(政令指定都市制度)との間には整合性がない。しかし、

以上のような理由から、政令市になれば同制度が導入されると考える者がおり、堺市では、市民の要望としてJR西日本に適用を要請した(ただし、導入予定はないと返答された)[3]。新潟市を含め、今後、同制度が導入されていない6つの政令市(さいたま市千葉市・堺市・新潟市・浜松市静岡市)や、他の50万人以上の市で適用を求める動きがある可能性がある。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 第101回国会 予算委員会第七分科会 第1号
  2. 国勢調査 時系列データ 第5表
  3. 「市民の声」Q&A(堺市)