漆胡瓶

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漆胡瓶(しっこへい,Percian style Black Lacquered Pitcher)は漆塗りで鳥のくちばしのような注ぎ口のあるペルシャ式水瓶である。シルクロードの東西交流を物語る名品と言われる。

概要

聖武天皇の愛用品で国家珍宝帳に「漆胡瓶一口」と記載されている。正倉院に瓶が三口伝わる。漆胡瓶、白瑠璃瓶、二彩の磁瓶である。漆胡瓶と白瑠璃瓶は、ともに注ぎ口が鳥の頭の形状である、把手がつく。この器はササン朝ペルシャで流行し、中国では西方を意味する「胡」をつけ、胡瓶の名称とした。全面に黒漆を塗り、草花や動物の文様は銀板の裁文を嵌装する「銀平脱技法」で製作されている。平脱は、文様の形にあわせた金や銀の薄板を張りつける技法である。ペルシャ式の形状とで発達した漆芸とが融合したものであり、東西文化の交流が伺える。

蓋、胴部、台脚に山岳、鴛鴦、ヤツガシラ、鹿、羊、蝶、蜂、草花をあしらい、蓋の環座には十二弁花弁をあらわし、把手および脚柱の節、台座側面には花菱文の装飾がある[1]

正倉院文書

天平勝宝八年六月二一日・東大寺献物帳
「漆胡瓶一口 銀平脱、花鳥形、銀細鏁連二繋鳥頭盖一受二三升半一」

展示歴

管理番号

  • 収蔵場所:北倉 43
  • 高さ:41.3cm
  • 胴径:18.9cm

素材

漆器は長年たつとゆがみやひび割れが生じやすいのは漆に含まれる水分が長い間になくなるため変形を起こすからである。ところが、本品は1000年以上に渡り変形や亀裂がない。これが長い間、不思議に思われていた。 宮内庁の木村法光によれば、漆胡瓶が「巻胎作り」で作られていることを明らかにした[3]。木や竹を巻き重ねて製作されているため、ゆがみが強いと考えられている。薄いテープ状の木を外側から内側に向けて巻き付ける。巻胎技法によってゆがみやすい木の弱点を克服している。

長屋王跡出土の類似技法

平城京の長屋王邸宅跡周辺から巻胎技法の漆器が出土している。約30cm離れた溝から見つかった円弧上の二つの破片である。長さは65cmと33cmである。器胎は水に強いカヤ材を幅2mm、厚さ1から2mmの棒状に加工し、同心円状に巻き付けたものであった[4]

  1. 奈良国立博物館(2008)『正倉院展 六十回のあゆみ』奈良国立博物館
  2. 奈良国立博物館(1998)「奈良国立博物館便り 第27号」奈良国立博物館
  3. 木村法光「漆胡瓶」(『国華』 (1119)3),pp.7-13
  4. 金子裕之(1991)「二条大路から出土した「翳」」奈良文化財研究所年報 (1990), 41-43