十代目金原亭馬生
十代目金原亭馬生(じゅうだいめ きんげんていばしょう,1928年1月5日 - 1982年9月13日）は落語家。師匠は五代目古今亭志ん生。父は五代目古今亭志ん生。三代目古今亭志ん朝は弟。「初代古今亭志ん朝」「五代目古今亭志ん橋」。「人情落語の名手」「玄人好みの噺家」と言われる。本名は美濃部清。
概要[編集]
入門まで[編集]
1928年1月5日、東京・笹塚(東京市豊多摩郡和田堀町方南71（現：杉並区方南）)で五代目古今亭志ん生の長男として生まれる。4月に「なめくじ長屋」に転居する。幼少期は絵が得意で、日本画家の鴨下晁湖に弟子入りした。1940年（昭和15年）豊山第二中学校（旧制私立豊山中学校定時制）に入学するが、中退した。写真家[1]志望であったが、駒込の病院で大手術したり、戦争が激しくなり思うようにならず、1942年8月、父の五代目古今亭志ん生に入門し、「四代目むかし家今松」を名乗る。
二つ目[編集]
当時は戦争のため若手落語家がおらず。入門後すぐむかし家今松の名前で、二つ目として高座に上がった。 当時は若い前座は一人もいなかった。若い二つ目は前座同様にこき使われた。さらに老前座の世話もさせられた。老前座をしているのは、一度は真打になったが、売れないので固定給のある前座の方がよいと下がってきた老人たちである。楽屋に居ても全く働かない[2]。一家の主柱として家族を養う苦労を重ねる。古参落語家たちから稽古をつけてもらい、ネタの数を大幅に増やした。
真打[編集]
今松から1944年に「初代古今亭志ん朝」に改名した。古今亭志ん生が終戦直前に満州に行ってなかなか帰らないので、留守を守り、苦労しながら修業を重ねた。1947年1月、父・志ん生が帰国した。1947年に真打ちに昇進し、「五代目古今亭志ん橋」を襲名する。1949年10月に「十代目金原亭馬生」を襲名した[2]。父である五代目古今亭志ん生からはあまり噺の稽古をつけてもらえなかった。
芸風の確立[編集]
親の七光りだと陰口があり、また志ん生の物まねと言われ、なかなか評価されなかったが、得意の踊りを引っ込めて、落語に精進した。他の師匠から稽古を受けたり、人情噺などのじっくり聴かせる噺に本領を発揮し、噺にまつわる歴史や背景を調べ上げるなどリアリズムを追求して噺を練り上げ、柔らかい持ち味で季節感を漂わせる芸風を確立した。林家彦六に続く、人情噺の名手となった[2]。 大正生まれの戦前派と、戦後入門した人たちの間で貴重な存在だったが、1982年(昭和五十七年)9月13日、54歳の若さで亡くなった[3]。四十代で“いぶし銀の話芸”と評され、若くして落語協会副会長を務めた。私生活では、噺家らしい和服を貫き、書画や俳句をたしなむなど日本風の風格のある生活であった。
墓所は台東区谷中の「長久院」(東京都台東区谷中6丁目2-16、真言宗豊山派)[4][5]。
受賞[編集]
得意ネタ[編集]
- 「たがや」
- 「二番煎じ」
- 「菊江の仏壇」
- 「天狗裁き」
- 「お富与三郎」
- 「うどんや」
- 「幾代餅」
