太平洋新幹線

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太平洋新幹線(たいへいようしんかんせん)は、東京都大田区の東京国際空港駅から青森県八戸市八戸駅(運行は新青森駅まで)までを結ぶ、東日本旅客鉄道(JR東日本)の高速鉄道路線およびその列車(新幹線)である。

概要[編集]

日本の第64・65代内閣総理大臣である田中角栄が提唱した、「日本列島改造論」に基づき計画された「成田新幹線」(東京駅~成田空港駅)、「常磐新幹線」(東京駅~仙台駅)、「三陸新幹線」(仙台駅~青森駅)を統合し、南側は東京国際空港駅、北側は八戸駅までの路線となり、2013年1月1日に開業した。

区間が長大のため、下記のような多様な性格を持つ路線となった。

東京駅~酒々井アウトレット駅間は主に京葉線総武本線、水戸駅~相馬駅間は主に常磐線、新気仙沼駅以北は主に三陸鉄道に沿って建設されている。

本稿では便宜上、下記の呼称を用いる。

東京国際空港駅 - 成田空港第2ビル駅間 : 成田区間
成田空港第2ビル駅 - 仙台駅 : 常盤区間
仙台駅 - 八戸駅 : 三陸区間


路線データ[編集]

  • 距離(営業キロ):848.5km
  • 軌間:1435mm(標準軌)
  • 駅数:31(起終点駅含む)
  • 複線区間:全線複線
  • 電化区間:全線電化・交流25kV/50Hz
  • 保安装置:自動列車制御装置(DS-ATC)


設置駅[編集]

駅・停車駅一覧[編集]

太平洋新幹線における駅・停車駅一覧表
区間 駅名 東京駅
からの
営業
キロ
接続路線 停車/通過 駅構造 退避 所在地
リアス うみねこ ひたち ときわ えどまえ ゆうづる
成田区間 東京国際空港駅 21.3 京急空港線・東京モノレール線 島式ホーム3面6線 - 東京都 大田区
東京駅 0.0 JR各線・東京メトロ丸ノ内線 島式ホーム3面6線 千代田区
※ 東京DLS駅 12.7 ディズニーリゾートライン 東北新幹線はやて号と併結 | 相対式ホーム2面2線 × 千葉県 浦安市
千葉駅 39.2 JR各線・私鉄各線 | | | 相対式ホーム2面4線 千葉市
酒々井アウトレット駅 61.7 | | | 相対式ホーム2面2線 × 印旛郡酒々井町
成田空港駅 78.2 JR成田線京成本線
京成成田空港線
島式ホーム2面4線 成田市
空港第2ビル駅 79.2 島式ホーム2面4線
常盤区間
土浦駅 121.2 JR常磐線 | | 相対式ホーム2面4線 茨城県 土浦市
茨城空港駅 146.2 | | 相対式ホーム2面4線 小美玉市
水戸駅 172.7 JR常磐線・水郡線・大洗鹿島線 | 島式ホーム2面4線 水戸市
日立駅 204.3 JR常磐線 | | 相対式ホーム2面2線 × 日立市
北茨城駅 229.0 JR常磐線 | | 相対式ホーム2面4線 北茨城市
ハワイアン湯本駅 258.9 JR常磐線 | | 相対式ホーム2面2線 × 福島県 いわき市
いわき駅 266.8 JR常磐線・磐越東線 | 島式ホーム2面4線
Jヴィレッジ駅 289.8 JR常磐線 | | 相対式ホーム2面4線 双葉郡広野町
富岡駅 305.2 JR常磐線 | | 相対式ホーム2面4線 双葉郡富岡町
相馬駅 364.4 JR常磐線 | 相対式ホーム2面4線 相馬市
仙台空港駅 400.5 仙台空港鉄道仙台空港線 | 島式ホーム2面2線 × 宮城県 名取市
仙台駅 418.0 東北新幹線・JR各線・私鉄各線 東北新幹線ホームと共用 仙台市青葉区
三陸区間
本塩釜駅 433.5 JR仙石線 | | 相対式ホーム2面4線 塩竈市
松島海岸駅 440.7 JR仙石線 | | 相対式ホーム2面2線 × 宮城郡松島町
石巻駅 467.7 JR石巻線・仙石線 | 島式ホーム2面4線 石巻市
南三陸中央駅 516.5 | | 島式ホーム2面4線 本吉郡南三陸町
新気仙沼駅 555.6 | 相対式ホーム2面4線 気仙沼市
盛駅 596.7 JR大船渡線・三陸鉄道南リアス線 | | 島式ホーム2面2線 × 岩手県 大船渡市
釜石駅 635.9 JR山田線・釜石線・三陸鉄道南リアス線 | | 相対式ホーム2面4線 釜石市
宮古駅 691.3 JR山田線・三陸鉄道北リアス線 | 島式ホーム2面4線 宮古市
北山崎口駅 736.2 三陸鉄道北リアス線 | | 相対式ホーム2面2線 × 下閉伊郡普代村
久慈駅 762.3 JR八戸線・三陸鉄道北リアス線 | | 相対式ホーム2面4線 久慈市
種市駅 793.0 JR八戸線 | | 相対式ホーム2面4線 青森県 九戸郡洋野町
八戸駅 827.2 東北新幹線・JR八戸線・青い森鉄道線 東北新幹線ホームと共用 八戸市
七戸十和田駅 863.3 | | 上北郡七戸町
新青森駅 909.0 JR奥羽本線 青森市

  ※ 東京DLS駅=「東京ディズニーランドステーション駅」


駅概要[編集]

  • 東京国際空港駅
当新幹線の終端となる駅で、折り返し設備を備える。
京急空港線ホームの直下に設けられた地下駅で、ホームの両端がそれぞれ空港第一ビル・第二ビルと直結している。
  • 東京駅
八重洲口「グランルーフ」直下付近に設置された地下駅。
3面6線のホームを備え、列車の折り返しに対応している。
発着番線は、31~36番線となる。
  • 東京ディズニーランドステーション駅
ディズニーリゾートラインの駅の直下に設けられた地下駅。
出口は「ディズニーランドホテル口」、「ディズニーランドゲート口」、「リゾートライン連絡口」の3ヶ所が存在する。
  • 千葉駅
在来線直下の地下駅。
総武本線と外房線の分岐点にある駅ビル「ペリエ」の一部が、新幹線連絡口として供用されている。
  • 新酒々井駅
「酒々井プレミアム・アウトレット」と東関東自動車道「酒々井PA」との間に設置された高架駅。
アウトレットモールへは、連絡歩道橋を通じて徒歩約3分で入場可能である。
  • 成田空港駅
JR成田線・京成線ホームの下(地下3階)に設置。
  • 空港第2ビル駅
JR成田線・京成線ホームの下(地下3階)に設置。
「えどまえ」は当駅で折り返す。
  • 土浦駅
在来線ホーム・コンコースの上を被うように増築された高架駅。
  • 茨城空港駅
空港ターミナルビル正面の県道(359号茨城空港線)の直上に設置された高架駅。
駅とターミナルビル2階が連絡通路により直結している。
  • 水戸駅
在来線ホーム直下を貫く「水戸駅トンネル」内にある地下駅。
一部の「ときわ」は東京国際空港駅~当駅間の運転となる。
  • 日立駅
在来線ホーム西側の貨物駅の一部を、新幹線高架ホームに転用。
「ときわ」のみ停車となり、「ひたち」による「日立飛ばし」が公然と行われる。
  • 北茨城駅
元「磯原駅」。新幹線開業に伴い改称された。
在来線ホーム・コンコースの上を被うように増築された高架駅。
  • ハワイアン湯本駅
元「湯本駅」。新幹線開業に伴い改称された。
在来線ホーム東側の駐車場の一部を、新幹線高架ホームに転用。
「スパリゾートハワイアンズ」の運営会社である常磐興産が、駅および周辺施設の改修に出資した。
  • いわき駅
在来線ホーム北側の引き込み線の一部に、新幹線高架ホームを増築。
  • Jヴィレッジ駅
国道6号線「岩沢交差点」北東の丘の上に設置された地上駅。
  • 富岡駅
旧駅舎が東日本大震災による津波により崩壊・流出したため、約3km西の諏訪神社と常磐自動車道との間の高台に、在来線と共に新駅舎を建設。
  • (双葉トンネル)
福島第一原発の事故により、放射能汚染された双葉エリアの直下を貫く、全長約50㎞の長大トンネル。
双葉郡富岡町から南相馬市原町に至る。
  • 相馬駅
在来線ホーム東側の引き込み線の一部に、新幹線高架ホームを増築。
一部の「ひたち」は通過する。
  • 仙台空港駅
空港ターミナルビル直下に設置された地下駅。
仙台空港線の駅とは通路で繋がっており、空港利用者のみならず、名取エリアからの新幹線利用も促している。
  • (長町信号場)
仙台市太白区あすと長町の南側、太子堂駅近くにある東北新幹線との分岐点。
  • 仙台駅
東北新幹線とホームを共用し、下りは11番線、上りは14番線を使用する。
全ての列車が停車し、「はやて」「リアス」の分割・併合もここで行われる。
  • (東仙台信号場)
仙台駅から新青森方面約7km、仙台貨物駅近くにある東北新幹線との分岐点。
  • 本塩釜駅
仙石線ホーム南側に、新幹線用の高架ホームを増設。
  • 松島海岸駅
仙石線ホームと、県道144号線の間の崖を切り崩して、新幹線用のホームを増設。
  • 石巻駅
在来線ホーム東側のJR貨物所有地の一部に、新幹線用の高架ホームを増設。
  • 南三陸中央駅
旧志津川町の、BRTベイサイドアリーナ駅(バス停)と一体化して新設された高架駅。 
南三陸町役場およびスポーツ交流村駅の最寄り駅となる。
在来線(気仙沼線)ホームの用地も確保されている。
  • 新気仙沼駅
気仙沼市化粧坂の高台に設けられた新駅。
駅前にはミヤコーバスのターミナルが設けられ、市内各方面へ連絡している。
  • 盛駅
在来線ホームと立体交差する形で設けられた高架駅。
  • 釜石駅
在来線ホーム北側の入替線用地の一部に、新幹線用の高架ホームを増設。
  • 宮古駅
在来線ホーム南側の入替線用地の一部に、新幹線用の高架ホームを増設。
一部の「うみねこ」は仙台駅~当駅間の運転となる。
  • 北山崎口駅
新幹線開業にあたり「普代駅」から改称された。在来線ホーム東側に、新幹線用の高架ホームを増設。
三陸海岸随一の景勝地である「北山崎展望台」への路線バス連絡が強化されている。
  • 久慈駅
在来線ホーム東側に、新幹線用の高架ホームを増設。
  • 種市駅
信号場の予定であったが、駅として開業。
在来線ホーム西側に、新幹線用の高架ホームを増設。
  • (南八戸信号場)
青い森鉄道線北高岩駅付近にある東北新幹線との分岐点。
  • 八戸駅
駅設備は東北新幹線と共用する。


列車[編集]

  • 「リアス」
    三陸区間の速達タイプ。
    一部を除き東京駅 - 新青森駅間の運転で、東京駅 - 仙台駅は東北新幹線「はやて」との併結運転となり、仙台以北は主要駅のみ停車する。
    新幹線列車では、初めてのカタカナ列車愛称となる。
    車両はE7系2000番台を使用。
  • 「うみねこ」
    三陸区間の各駅停車タイプ。
    仙台駅 - 新青森駅(一部は宮古駅)間の運転となる。
    車両はE7系2000番台を使用。
  • 「ひたち」
    成田、常盤区間の速達タイプ。
    東京国際空港駅 - 仙台駅(一部は水戸駅)間の運転で、主要駅のみ停車する。
    在来線時代の特急「スーパーひたち」に相当。
    車両はE4系2000番台を使用。
  • 「ときわ」
    成田、常盤区間の各駅停車タイプ。
    東京国際空港駅 - 仙台駅(一部は水戸駅)間の運転となる。
    列車名は当初は、水戸黄門にちなみ「Maxこうもん」とされる予定だったが、語呂が良くないので「ときわ」となった。
    在来線時代の特急「フレッシュひたち」に相当し、「ひたち」と「えどまえ」の補完も兼ねる。
    車両はE4系2000番台を使用。
  • 「えどまえ」
    成田区間の速達タイプ。
    空港間連絡として設定され、東京国際空港駅 - 成田空港駅間の運転となる。
    在来線時代の特急「成田エクスプレス」に相当。
    車両はE4系2000番台を使用。
  • 「ゆうづる」
    新幹線初の夜行列車。
    東京国際空港駅 - 新青森駅間の運転となり、深夜帯に経由する駅は仙台駅を除いて通過する。
    路線、地上設備メンテナンス時間確保のため、隔日運転となる。
    車両は専用のE585系を使用。

使用車両・編成[編集]

*全車両が、宮城県宮城郡利府町の「新幹線総合車両センター(仙セシ)」所属となる。

E7系2000番台[編集]

北陸新幹線の新世代車両として開発されたE7系(0番台)をベースに、三陸区間用に最適化したもの。

「リアス」・「うみねこ」に充当される。

0番台との主な差異は下記の通り。

  • 東北新幹線内でのE5系との併結運転のため、最高速・加減速性能の向上
(最高速度は、東北新幹線区間では320km/h・三陸新幹線区間では280km/h)
  • 7両編成化および2(12)号車・5(15)号車に喫煙ルームの設置
  • 塩害対策の強化


  • E7系「リアス」
※ 東京方から11号車・12号車… の順となる
号車 11号車 12号車 13号車 14号車 15号車 16号車 17号車
種別 グランクラス
指定席
グリーン車
指定席
普通車 指定席
座席 1+2列 2+2列 2+3列


  • E7系「うみねこ」
※ 仙台方から1号車・2号車… の順となる
(グランクラスはシートサービスのみ)
号車 1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車
種別 グランクラス
指定席
グリーン車
指定席
普通車 指定席 普通車 自由席
座席 1+2列 2+2列 2+3列


E4系2000番台[編集]

東北・上越新幹線で余剰となった二階建て「Max」用E4系を、成田・常磐区間用に改造の上転用。

「ひたち」・「ときわ」・「えどまえ」に充当される。

基本編成8両編成と付属編成4両編成で構成され、通常は8両編成、多客期は12両編成で運行される。

車体の塗装は、沿線の特産品でもある、利根コカ・コーラボトリング社製「マックスコーヒー」のデザインをモチーフにし、黄色をベースに茶色のウェーブ模様が入っている。

0番台からの特筆すべき変更点は下記の通り。

  • シート配置の見直しによる居住性の改善
  • 空港間乗り継ぎ(トランジット)に対応するための、荷物保管室の設置
  • 1号車・7号車のそれぞれ1階に、喫煙ルームと飲料・軽食などの自動販売機の設置
  • 7号車1階に「酒盛り常磐線」の伝統を受け継ぐ、「立ち呑みフリースペース」の設置


  • E4系「ひたち」・「ときわ」・「えどまえ」
※ 東京方から1号車・2号車… の順となる
基本編成 付属編成
号車 1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車 8号車 9号車 10号車 11号車 12号車
2階 種別 グリーン車
指定席
普通車
指定席
普通車
自由席
普通車
自由席
座席 2+2列 2+3列 2+3列 2+3列
1階 種別 グリーン乗客専用
サロン
グリーン個室
指定席
普通車
指定席
立ち呑み
フリー
スペース
荷物保管室

業務用室
普通車
自由席
座席 全8室 2+2列 2+3列


E585系[編集]

新幹線では初の試みとなる、寝台列車用として製造(改造)された。

余剰となった583系電車を新幹線規格に改造し、先頭車は余剰の新幹線400系電車の先頭部を切断の上加工し、583系中間車に結合という大胆な手法で制作された。

種車の583系からの主な改造点は、下記の通り。

  • 新幹線規格への走行機器の改造
  • 台車およびブレーキの交換、台枠の強化
  • パンタグラフの交換、パンタカバー取り付け、天井ユニットクーラーの移設による屋根平滑化
  • 直流抵抗制御からVVVFインバータ制御の交流モーターへ換装、および交流25kV・20kVへの対応
  • 東北・秋田・山形新幹線対応の保安装置の設置(新幹線用DS-ATC、奥羽・田沢湖線用ATS-P)
  • 車内設備の改装
  • グリーン車(1号車)
400系電車の廃車発生品シートを流用し、2×1の座席配置となる
夜間は車内減光される(下りは空港第2ビル駅、上りは八戸駅発車後)
  • A寝台シングルデラックス(2号車)
583系B寝台の2区画分を、1人用個室として区画し改装
寝台1区画分を撤去し、リビングとしてソファー・テーブル・テレビを新設
ベッド部は、上中段を撤去し下段部分をシングルベッドとして使用
  • A寝台ツインデラックス(3号車)
上記シングルDXと同じ構成だが、ベッド部が2段となっている
  • B寝台シングルツイン(4~7号車)
583系B寝台の1区画分に間仕切りと扉を設置し、個室として改装
電動昇降式の上段寝台が新設され、2人用個室としても利用可能
室内構成は「トワイライトエクスプレス」の「シングルツイン」とほぼ同じとなる
なお6号車の車端区画(通称「モハネ582のパン下」)は、喫煙ルーム・ミニロビーとして区画されている
  • ミニサロン・シャワー室(3号車)
ミニサロンは、ソファー・喫煙ルーム・自動販売機で構成されるフリースペースとなっている
シャワー室は、「カシオペア」などと同様の、カード式シャワーが2室設置されている。


  • E585系「ゆうづる」
※ 東京方から1号車・2号車… の順となる
号車 1号車 2号車 3号車 4号車 5号車 6号車 7号車
種別 グリーン車
指定席
A寝台 A寝台 ミニサロン
シャワー室
B寝台
シングルDX ツインDX シングルツイン
型式 クロE585 モロネE584 モロネハE585 モハネE585 モハネE585 モハネE584 クハネE585

並行在来線[編集]

対象となるのは常磐線の水戸駅以北・気仙沼線・大船渡線の一部・山田線の一部・八戸線だが、東日本大震災による被害の復旧と、福島第一原子力発電所事故による放射線汚染問題が解決するまでは、JR東日本の継続管理となり経営分離は当面行われない。