松崎正臣

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松崎 正臣

松崎 正臣(まつざき まさおみ)とは、ベネッセ個人情報流出事件の犯人である。

事件概要[編集]

進研ゼミで知られる通信教育大手「ベネッセコーポレーション」から、子どもと保護者の氏名、住所、生年月日、性別などの顧客情報約760万件の外部流出が確認され、ベネッセが2014年7月9日に発表した。

流出は最大で約2070万件に上る可能性がある。ベネッセは外部専門家をトップとする調査委員会を設置。警視庁不正競争防止法違反容疑で刑事告訴した。

通信教育事業を行うジャストシステムが名簿業者から流出情報とみられる約257万件を購入、ダイレクトメールに利用したことも判明した。

経済産業省は、全国学習塾協会日本通信販売協会などに個人情報保護法の順守、徹底を要請した。

詳細[編集]

ベネッセ側は、社内調査により、データベースの顧客情報が外部に持ち出されたことから流出したと説明。これはベネッセの顧客に、ベネッセのみに登録した個人情報を使った、別の通信教育を行う会社からのダイレクトメールが届くようになり、ベネッセから個人情報が漏洩しているのではないかという問い合わせの急増により発覚した。

この事件により、責任部署にいた二人の取締役が引責辞任することとなった。この事件を受け、警視庁は不正競争防止法違反の疑いで捜査を開始したことが7月9日、警視庁への取材でわかった。

また、顧客情報を流用したのはIT事業者であり、通信教育事業を手掛けるジャストシステムであると共同通信が報じた。ちなみにジャストシステムへ名簿を提供したのは東京都福生市名簿業者の文献社と報じられており、文献社の説明によると、東京都内の別の名簿業者から2014年4月下旬~5月ごろに購入したとされる。

なおジャストシステムは7月10日、「当社がベネッセコーポレーションから流出した情報と認識したうえで、これを利用したという事実は一切ございません」と、否定したが、ダイレクトメールに使用した名簿を文献社から購入したか述べていない。また、文献社によると、文献社とジャストシステムはデータの出所が不明であると把握しており、両社ともベネッセのデータとは知らなかったとしている。

さらに、文献社に販売した東京都武蔵野市のパン・ワールドも「別の業者から買った」と述べた。

ベネッセは顧客情報に関するデータベースの運用や保守管理を岡山市に本社があるグループ企業「シンフォーム」に委託。同社はこうした業務を、さらに複数の外部業者に分散して再委託していた。シンフォームとパン・ワールドの間には、他の名簿業者が関与したとされている。

7月11日、ジャストシステムは、情報の出所が不明のまま購入していたことが社内の調査で判明し、企業としての道義的責任から、購入したデータ、257万3068件すべてを社内のデータベースから削除することを決めたと発表した。

7月12日、ジャストシステムの入手ルートとは別に、複数の名簿業者の間で取引されていたことがわかった。

7月12日、ベネッセは、ジャストシステムが名簿を削除すると発表したことに対し、「一方的に情報を削除することは、警察や経済産業省による原因の究明を難しくするだけでなく、情報が漏えいしたお客様の不安感の払しょくには至らない」とコメントを発表。その上で、再発防止に向け、被疑者の特定だけでなく、データの流通ルートを解明し、流出した個人情報が出回っていないことを検証する必要があるとして、情報を購入した企業や名簿業者に、「積極的に情報を開示し、自主的に警察の捜査へ全面的に協力することを強く要請する」と情報開示を求めた。一方、「我々は自らの責任を他社に転嫁するものではありません。当社の責任は真摯に受け止め、全力をもって解決にあたる」とした。また、ジャストシステムは7月12日「まだ削除しておらず、警視庁から要請があれば対応する」と説明した。

7月15日、ベネッセは、同日付で調査委員会を発足させたと発表。

7月16日、流出したデータは少なくとも3つのルートで名簿業者など約10社に拡散していたことがわかった。

7月17日午前、ベネッセは、顧客情報が流出した経緯や再発防止策をまとめた報告書を経産相に提出した。

7月17日、システムエンジニアの派遣社員松崎正臣を逮捕。

この事件の影響により、2014年夏に開催予定だった鉄道博物館の一部イベントなど、ベネッセ主催の子ども向けイベントを2014年秋まで中止することを決定した。

なお、ベネッセは、定期的な外部監査を受け、個人情報を適切に管理する企業としてプライバシーマークを取得していた。

SEを逮捕。秘密複製容疑、1年で1億件[編集]

警視庁生活経済課は2014年7月17日、顧客データベース(DB)の管理で外部業者から派遣されていたシステムエンジニア(SE)、松崎正臣(39)=東京都府中市寿町1=を不正競争防止法違反(営業秘密の複製)容疑で逮捕した。

同課によると、「ベネッセの顧客情報を持ち出したことに間違いない」と容疑を認め、2014年6月までの約1年間で、重複分も含め、延べ1億件以上の情報を持ち出したと説明しているという。

妻子と4人「生活困っていた」[編集]

逮捕容疑は2014年6月17日、DBの操作端末があるベネッセのグループ企業「シンフォーム」(岡山市)東京支社(東京都多摩市)で、業務上貸与されたパソコンに2回計約1019万件の顧客情報をダウンロードして保存。

私物のスマートフォンに情報を移し、コピーを作成して不正に入手したとしている。松崎が持ち出したのは、全国で1993~2013年に生まれた子供の名前や住所、生年月日などの情報。ベネッセが分析した結果、すべて同社のものと一致した。

逮捕前の任意聴取に松崎容疑者は「金がほしかった。顧客情報は営業秘密で売ってはいけないと知っていた」と供述したという。2013年7月~2014年6月、月に1、2回の頻度で情報を持ち出し、インターネットで探した都内23区の名簿業者に約15回、計約250万円で売却したと説明した。

同課によると松崎は2013年7月、貸与のパソコンにスマートフォンを接続した際、情報を移せることに気づき、不正を始めた。スマホ本体や付属のマイクロSDカードにコピーし、持ち出しを繰り返すようになったという。ベネッセにはアクセス記録を定期的にチェックする体制がなく、見抜けなかったとみられる。

松崎は2012年4月からシンフォームの東京支社に派遣され、コンピューターシステムの開発などを担当。漏えい発覚後の7月10日に派遣元の会社を解雇された。

松崎「イベントで集めた」と持ちかけ[編集]

松崎正臣が名簿業者に売却した顧客情報に、不正流出を防ぐためのベネッセ独自のダミー情報が含まれていたことが分かった。警視庁生活経済課は、名簿業者が不正に入手されたものと認識しながら別の業者に転売した可能性があるとみて、不正競争防止法違反容疑で捜査する。

松崎はインターネットで東京都内の名簿業者を探し出し、買い取りを要求。ベネッセの顧客情報であることを隠し、「イベントで集めたデータだけど、いらなくなったので売りたい」と話したという。

名簿業者は15回ほど買い取りに応じており、生活経済課の任意聴取に対し「松崎とは面識がなく、不正に入手したものとは知らなかった。1社にだけ転売した」と説明した。

ただ、顧客情報には見ればベネッセのものと分かるダミー情報が含まれ、捜査関係者は「不正ではないと思っていたのに、1社にしか転売しないのは不自然」と指摘。不正入手の認識があった可能性を示唆する。

同法では、不正の利益を得る目的で流出元から営業秘密を直接入手して転売した場合にも開示の罪に問われ、流出元と同じ10年以下の懲役か1千万円以下の罰金が科せられる。

米金融大手シティーグループ系列のカード会社の顧客情報が大量流出した事件では、保険勧誘会社から流出情報を買い取ったとして、通信関連会社元社長が同法違反の開示容疑で書類送検されている。

一方、ベネッセの顧客情報を流用したジャストシステムやジャスト社に顧客情報を転売するなどした名簿業者2社は入手に直接関与していないとして、立件が見送られる見通し。

顧客補償に200億円[編集]

ベネッセ社の親会社・ベネッセホールディングスの原田泳幸(えいこう)会長兼社長らは17日、東京都内で記者会見し、「大切なお子様の『学び』に携わってきた企業として、このような事態を招いたことに深く反省する」と改めて謝罪した。今後、200億円を準備し、個人情報が流出した顧客への補償を進める考えを示した。

会見冒頭、深々と頭を下げた原田氏は「我が社のお子様情報は、一般的なお客様情報以上に責任を負うべき機密情報」と述べ、情報管理の強化を図ると語った。顧客への補償を行うことについては「(事態の)重大さを認識した私の決断」と説明。おわびの品を贈ることや受講費を割り引くことなどを検討するという。

記者会見で「ベネッセは被害者なのか、加害者なのか」と問われた原田氏は、「今の段階では、お客様にこれだけ迷惑をかけたという意味で加害者だと思う」と語った。情報流出を公表した7月9日から16日までに、ベネッセ社側には、問い合わせや苦情が5万件以上寄せられているという。

人物像[編集]

2人の幼児を育てる父親だった。松崎正臣は「借金があり、生活に困っていた」と供述し、生活の困窮が背景にあったことをほのめかしている。

2014年7月17日午後2時15分ごろ、松崎は東京都府中市の自宅マンションから捜査員に囲まれるようにして捜査車両に乗り込み、捜査本部が置かれた警視庁多摩中央署に向かった。

同庁などによると、松崎は2012年1月から、都内のシステム開発会社にSEとして勤務。同年4月からベネッセのグループ企業「シンフォーム」の東京支社に派遣され、DBのシステムを構築する業務を担当しながら、他のSEを指導する仕事もしていた。

マンションの大家や住民の話では、松崎は妻と、2歳と1歳の娘2人との4人暮らしで、2011年秋ごろに引っ越してきた。マンションは賃料月7万円の2DKで生活ぶりは質素だった。松崎の妻は周囲に「旦那の給料が安い」と話していたという。

関係者によると、松崎は漏えい問題の発覚後、ベネッセ側が用意した宿泊施設で生活しながら警視庁の任意聴取に応じていた。7月10日に所属先の会社から解雇され、妻は「実家の親の具合が悪いので、今月いっぱいで引っ越したい」と大家に説明し、数日後には家族全員で菓子折りを持って「お世話になりました」とあいさつに訪れたという。

事情を知らない大家が逮捕直前に部屋に行き、「鍵を返してください」と求めると、松崎は「今月中にきちんとします」と応じたという。

大家の女性(78)は「真面目そうな印象で、愛犬を連れて家族で楽しそうに歩いているのをよく見かけた。お金に困っている様子はなかった」と話した。

システム開発のリーダー格[編集]

松崎正臣は、同社のデータ処理に関するコンピューターシステムの開発にも携わり、開発チームのリーダー的存在だった。企業にとって生命線ともいえる顧客情報のデータベースの閲覧権限も認められており、内部犯行への対策の難しさが改めて浮き彫りになった。

松崎はベネッセのグループ企業「シンフォーム」と都内の情報処理会社が取り組んでいたデータシステムの共同開発に携わっていた。システムをチェックする立場にあり、大量にダウンロードする権限も付与されていた。

犯人が背負う「実刑3年」「損害賠償40億円」[編集]

「個人情報の中身によって違いますが、子供の情報の場合、業者に売るときは1件1円が相場。報道されているように流出件数が760万件なら、男の受取額は760万円になりますが、それだけ支払える名簿業者はまずいない。せいぜい200万円くらいではないか」(名簿業者)

個人情報流出問題に詳しい紀藤正樹弁護士が言う。

「不正競争防止法違反は、『10年以下の懲役または1000万円以下の罰金』で、懲役3年の不正アクセス禁止法違反や同じ3年の業務妨害罪より重い。今回ほど大量の個人情報が流出した事件は前例がなく、警察は被害の大きさを重く見たのです。派遣社員の男性は初犯ですが、執行猶予が付かず、懲役3~5年の実刑判決になるのではないか」

民事で被害者グループに損害賠償訴訟を起こされる可能性も十分だし、すでにベネッセは男を刑事告訴している。

「今のところ、原田会長兼社長は被害者への補償を否定していますが、警察沙汰となった以上、今のように強気のままでいられるか。過去の情報流出事件のように1人当たり500円を補償するとすれば、補償総額は760万人で38億円。このほかに被害者やマスコミ、警察などへの対応による人件費、システム改善費もあるでしょう。一連の騒動に伴うコストを合算すると、40億円前後。男性への損害賠償請求もそれくらいの金額になります」(紀藤正樹氏)

日本政府の対応[編集]

今回の事態を重く見た経済産業省は、7月10日にベネッセコーポレーションに対して「個人情報保護法に基づき、本件に係る事実関係などについての詳細を7月17日までに書面にて提出するよう」報告徴収指示を出したことを発表した。

また、経済産業大臣茂木敏充は7月11日の閣議後の記者会見で全国学習塾協会日本通信販売協会など業界団体に対して同種事案の再発防止策を求めることを明らかにした。同じく7月11日の閣議後の記者会見で内閣官房長官菅義偉が「個人情報保護法改正も検討せねばならない」と語っている。

7月15日、経済産業省は、全国学習塾協会、全国学習塾協同組合、日本通信販売協会の3つの団体の業界団体に対し、個人情報の適切な管理を強化することなどを要請した。

7月17日、経済産業省は、情報を名簿業者から購入していたジャストシステムから、事情聴取する方針を決めた。

関連項目[編集]