自転車
自転車(じてんしゃ)とは、乗り手自身の人力を主たる動力源として車輪を駆動することで推進力を得て、乗り手の任意による進路で地上を走行する乗り物である。
目次
概要
自転車を英語訳する際に当てられる単語Bicycleおよびその略語であるBike(バイク)は、ラテン語で「2」を表す接頭辞"bi"と「輪」を意味する"Circlo"に由来しており、2本の車輪を前後に並べた形態のものを指す。三輪のものはTricycle、四輪のものはQuadracycleなどと呼び分けるが、日本語の「自転車」は二輪以上であれば車輪の数は問わない。ただし自転車全体に占める個体数の割合において二輪車が圧倒的に多数であるため、実用上単に「自転車」と呼ぶ場合は二輪車を指すことが多い。
自動車などと比較して、移動距離当たりのエネルギーが少なく、有害な排出ガスが発生しない。また維持にかかる費用が安く、整備が容易である。メタボリックシンドロームの予防や解消をはじめとする健康増進効果への期待や、大気汚染や地球温暖化問題が叫ばれる現在は環境への負荷の少ない移動手段として、自転車通勤や自転車通学が見直されている。
自転車の歴史
自転車の歴史、特に黎明期の記録については現在もヨーロッパ各国を中心に資料の発掘と検証が続けられており、長らく定説とされてきたものを覆す研究も提示されている。また二輪の自転車よりも三輪以上の自転車がより早く製作されていたと考えられている。
安全型自転車の出現まで
自転車の祖先に当たる乗り物、またその着想についてはこれまでもさまざまな説が浮上しては否定されてきた。現在ではドライジーネ が、実際に製作されたことが確認できる二輪自転車の祖先とされる。これは、1817年にドイツのカール・フォン・ドライスによって発明された木製の乗り物で、前輪の向きを変えることができるハンドルと、前後同じ直径の二つの車輪を備えている。クランクやペダル、チェーンといった駆動装置はなく、足で直接地面を蹴って走るものであった。この乗り物は間もなくデニス・ジョンソンによってイギリスで改良され、ホビーホースなどと呼ばれた。
1861年にフランスでミショー型が発売された。これは現在の小児用の三輪車と同じようにペダルを前輪に直接取り付けたものであった。ピエール・ミショーがオリビエ兄弟より出資を受けて製造販売を始めたもので、これは初めて工業製品として量産された自転車でもある。なお、ミショー型については、ミショーの元で雇用されていたピエール・ラルマンが「自分こそがペダル付き二輪車の発明者であり、ミショーにそのアイデアを盗用された」と主張し、1866年にアメリカにて特許を取得している。
1870年頃、英国のジェームズ・スターレーが、スピードを追求するために前輪を巨大化させたペニー・ファージング型自転車を発売し好評を博したため、多くのメーカーが追随。前輪は拡大を続け、直径が1.5メートルを超えるものも出現した。当時盛んに行われたレースなどスポーツ用に特化したもので、長距離のクロスカントリーライドまで行われた。しかし極端に重心位置が高いため安定性が悪く、乗車中は乗員の足がまったく地面に届かないことなどにより日常用としては運用が困難であり、転倒すれば高所より頭から落ちるような危険な乗り物であった。日本ではだるま車などと呼ばれた。
1879年に英国人ヘンリー・ジョン・ローソンにより後輪をチェーンで駆動し、座席(サドル)の高さが低いため重心が低く、乗員の足が容易に地面に届く物が製作され、ビシクレット(二つの小輪)と名付けられた。これが英語の Bicycle の元となった。
1884年スターレー・アンド・サットン (Starley & Sutton)、ハンバー、マキャモン (McCammon)、BSAなどがビシクレットに改良を加えた自転車を発売する。
1885年にジェームズ・スターレーの甥ジョン・ケンプ・スターレーが「ローバー安全型自転車 (Rover Safety Bicycle)」の販売を開始する。側面から見て菱形のシルエットを持つダイヤモンド型のフレームを持ち、現在の自転車に近い姿になった。
1888年にジョン・ボイド・ダンロップが空気入りタイヤを実用化。その後フリーホイール機構が普及し、自転車の基本がほぼ完成された。
構造
骨幹部分
フレーム
フレームは自転車を構成する各部品が組み付けられる車台ある。自転車のフレームは伝統的にフロントフォークとセットで製造され、流通してきた歴史があり、公的な強度・耐久性試験もフレームとフロントフォークを組み付けた状態で行われるため、フレームにはフロントフォークを含む。これをフレームセットという。しかし近年は競技用の特殊な自転車において、フロントフォークを含まないフレームが販売されることもある。フレームは一般的に金属パイプと管継手をろう付けして構成されている。
フロントフォーク
前車輪を保持する部分。フロントフォークとフレーム体は転がり軸受けを介して結合される。これを中心として回転することで、操舵を可能としている。
車輪
ホイールを含む、自転車の「車」の部分。車体と乗員の重量を支えるのに充分な強度を持ち、同時に人力という脆弱な動力を無駄なく利用するために、抵抗なく滑らかに回転し、重量が軽いことが求められる。また走行の安全のために、スリップすることなく確実に路面をとらえる必要があり、快適性のために振動や衝撃を吸収することも期待される。
車輪に関しては駆動部分も兼ねているので下記の駆動部分の項目で詳述する。
接点部分
人間の身体が自転車と接触する部分はペダル、サドル、ハンドルの3点である。この3点は日本では「三つのル」と呼ばれ、特に長時間連続して走行する自転車において快適性に大きく影響する部分である。
ハンドルバー
操縦操作を行うとともに乗員の体を支え安定させるためのハンドル。用途によってさまざまな形態がある。
サドル
人の臀部を乗せる部分で、乗り手の体重の多くをここで受け止める。
ペダル
人の脚力を自転車へと入力するための部分。同時に運転操作を行う際の足場でもある。ペダルに関しては駆動部分も兼ねているので次項目の駆動部分でも触れる。
駆動部分
人間の筋力を推進力へと変化させる部分。 駆動系の部品は
の順で動力が伝わる。
この間に、
のような動力の効率を高める装置が組み込まれる場合がある。