「植物」の版間の差分
(新しいページ: ' ') |
|||
1行目: | 1行目: | ||
− | + | '''植物'''と呼ばれるのは、光合成をして、運動せずに生活する生物、あるいはそれに類似の生物をまとめる言葉である。広義には、[[動物]]でないものすべてを指す。 | |
+ | |||
+ | 現代の分類学上の群としての'''植物'''については、[[植物界]]を参照。 | ||
+ | == 概観 == | ||
+ | 日常用語では、植物といえば、[[草]]や[[木]]のことであるが、少し広く見れば、[[動物]]以外の非運動性の[[生物]]である、という認識がされている。たとえば、[[ワカメ]]や[[コンブ]]は光合成をするし、[[キノコ]]は地面から生えてくるから植物に見える。 | ||
+ | |||
+ | 学術的に植物とされる生物の範囲については、歴史的にさまざまな学説があった。 | ||
+ | |||
+ | === 二界説の枠組み === | ||
+ | [[アリストテレス]]はすべての[[生物]]を植物(非運動性であるか、感覚器を持つもの)と[[動物]]に分類した。[[リンネ]]の分類ではすべての生物はベシタブリア界(後に[[植物界]])と[[動物界]]に分けられた。これが、一般の認識における植物と考えていいと思われる。 | ||
+ | |||
+ | 当時は無脊椎動物や藻類、原生生物に関する知識が薄弱だったが、それらについても研究が進むにつれ、このどちらかに振り分けられた。 | ||
+ | |||
+ | 5界分類以前の古い2界分類等では、[[シダ植物]]、[[コケ植物]]、[[種子植物]]の他に、以下のグループが植物に属していた。 | ||
+ | |||
+ | * 細菌類(現在では[[真正細菌]]と[[古細菌]]に分ける) | ||
+ | <!-- ★菌類(カビ・キノコ類)の間違いでは?→細菌類は分裂菌植物と呼ばれていました。菌類は別途必要かと --> | ||
+ | * [[藻類]] | ||
+ | * [[菌類]] | ||
+ | |||
+ | これらをまとめてみると、植物の特徴は、以下のようなものである。 | ||
+ | |||
+ | * [[光合成]]をする([[独立栄養]])。 | ||
+ | * 非運動性。 | ||
+ | * 堅い[[細胞壁]]をもち、多細胞のものは[[先端成長]]を行う。 | ||
+ | |||
+ | 実際には、これらの特徴のどれかを持てば、'''植物'''と見なされる可能性があった。むしろ、動物でないものは植物と見なした、といった方がよいかも知れない。 | ||
+ | |||
+ | 現代の立場から考えれば、[[動物界]]に組み入れられた生物群が、ほぼ単系統のまとまったものであった分だけ、残りの'''植物界'''が、雑多な群の詰め合わせになってしまったとも言える。 | ||
+ | |||
+ | === 新しい枠組みの中で === | ||
+ | [[微生物]]が発見されるまでは、[[藍藻]]や[[キノコ]]を植物と見なすことにさほどの違和感はなく、このまとまりが疑問なく受け入れられていた。しかし、様々な生物が発見され、その性質が知られる内に、2界説の枠組みに疑問が投げかけられるようになった。具体的には、[[細菌]]類と[[藍藻類]]は[[原核生物]]であるから[[モネラ界]]へ分けられ、[[菌類]]は退化した植物ではなく、独自の進化を遂げた生物と考えられることが多くなった。この傾向を決定づけたのが、ホイッタカーの5界説であった。しかし、この段階でも、藍藻類を含めた光合成生物が、一つの系統的なまとまりを形成するという考えは暗に認められていた。 | ||
+ | |||
+ | それが崩壊したのは、分子遺伝学的情報が利用可能になったこと、原生生物各群の研究、特に微細構造の解明が進んだこと、そういった中から、[[細胞内共生説|細胞内共生]]によって、多様な原生生物が独自に藻類化したらしいことが明らかになったためである。 | ||
+ | |||
+ | たとえば、[[ミドリムシ]]類は[[緑藻]]類と同じ光合成色素を持っている。したがって系統上は近いものと考えることができたわけである。しかし、近年の考えでは、これは全く系統の異なった原生生物が緑藻類を取り込み、自らの[[葉緑体]]としたものだと考えられている。つまり、光合成能力は、その生物の系統とは関係なく得られると考えられる。したがって、現代では、藻類というまとまりに分類学的意味を見いだすことはできなくなってしまった。 | ||
+ | |||
+ | このような理由により、現代では'''[[植物界]]'''は、[[種子植物]]、[[シダ植物]]、[[コケ植物]]という陸上で[[進化]]した互いに近縁な群と、それと直接の系統関係があると思われる群のみを含めるものとなって言う。[[原生生物]]に位置づけられた[[藻類]]は、それぞれに藻類というくくりではなく、藻類を含む原生生物として見直しが進んでいる段階である。 | ||
+ | |||
+ | == 現在も使われる言葉として == | ||
+ | ただし、現代においても古典的な、広い意味での'''植物'''という語はそれなりの役割を担っている。[[動物]]と[[植物]]は我々の持つ生物の類型として、いわば'''動'''の動物と'''静'''の植物という、対立した生き方を示す言葉でもある。 | ||
+ | |||
+ | また、光合成生物をまとめて言い表すには、やはり'''植物'''という語が用いられる。 | ||
+ | たとえば[[光合成]]は[[生態系]]における生物生産の基礎をなすものであり、それを行う生物は、[[生産者]]と呼ばれる。これを説明する言葉としては、やはり植物を使うことが多いし、他に適当な言葉も見あたらない。そのような意味で、これからもこの言葉が使われる機会は少なくない。たとえば、海産の微小藻類は、現在の位置づけではほとんどが植物界ではないが、やはり'''植物[[プランクトン]]'''と呼ばれて行くと思われる。 | ||
+ | |||
+ | == 関連項目 == | ||
+ | {{ウィキポータルリンク|植物}} | ||
+ | [[Category:生物|しよくふつ]] | ||
+ | [[Category:植物|*しよくふつ]] | ||
+ | [[category:園芸学|しょくぶつ]] | ||
+ | |||
+ | |||
+ | {{Link FA|fi}} | ||
+ | |||
+ | [[af:Plant]] | ||
+ | [[als:Pflanzen]] | ||
+ | [[an:Planta]] | ||
+ | [[ar:نبات]] | ||
+ | [[ast:Plantae]] | ||
+ | [[bat-smg:Augalā]] | ||
+ | [[bg:Растения]] | ||
+ | [[bn:উদ্ভিদ]] | ||
+ | [[ca:Planta]] | ||
+ | [[cs:Rostliny]] | ||
+ | [[cy:Planhigyn]] | ||
+ | [[da:Plante]] | ||
+ | [[de:Pflanzen]] | ||
+ | [[el:Φυτό]] | ||
+ | [[en:Plant]] | ||
+ | [[eo:Plantoj]] | ||
+ | [[es:Plantae]] | ||
+ | [[et:Plantae]] | ||
+ | [[eu:Landare]] | ||
+ | [[fi:Kasvi]] | ||
+ | [[fr:Plante]] | ||
+ | [[frp:Planta]] | ||
+ | [[fur:Plantis]] | ||
+ | [[ga:Planda]] | ||
+ | [[gl:Planta]] | ||
+ | [[he:צמחים]] | ||
+ | [[hr:Biljke]] | ||
+ | [[hu:Növény]] | ||
+ | [[ia:Plantae]] | ||
+ | [[id:Tumbuhan]] | ||
+ | [[io:Planto]] | ||
+ | [[is:Jurt]] | ||
+ | [[it:Plantae]] | ||
+ | [[iu:ᐱᕈᖅᑐᖅ/piruqtuq]] | ||
+ | [[ko:식물]] | ||
+ | [[kw:Plans]] | ||
+ | [[la:Planta]] | ||
+ | [[lb:Planzeräich]] | ||
+ | [[lij:Plantae]] | ||
+ | [[ln:Etɔɛlɛ]] | ||
+ | [[lt:Augalai]] | ||
+ | [[lv:Augi]] | ||
+ | [[mk:Растенија]] | ||
+ | [[ms:Tumbuhan]] | ||
+ | [[nah:Tlanelhuayōmatiliztli]] | ||
+ | [[nds:Planten]] | ||
+ | [[nl:Planten]] | ||
+ | [[nn:Plante]] | ||
+ | [[no:Planter]] | ||
+ | [[nrm:Pliante]] | ||
+ | [[oc:Plantae]] | ||
+ | [[os:Зайæгой]] | ||
+ | [[pl:Rośliny]] | ||
+ | [[pt:Plantae]] | ||
+ | [[qu:Yura]] | ||
+ | [[ro:Regn Plantae]] | ||
+ | [[roa-tara:Regnum Plantae]] | ||
+ | [[ru:Растения]] | ||
+ | [[scn:Plantae]] | ||
+ | [[simple:Plant]] | ||
+ | [[sk:Rastliny]] | ||
+ | [[sl:Rastline]] | ||
+ | [[sr:Биљке]] | ||
+ | [[sv:Växt]] | ||
+ | [[sw:Mmea]] | ||
+ | [[th:พืช]] | ||
+ | [[to:ʻakau]] | ||
+ | [[tr:Bitkiler]] | ||
+ | [[uk:Рослини]] | ||
+ | [[ur:نباتات]] | ||
+ | [[vi:Thực vật]] | ||
+ | [[yi:פלאנץ]] | ||
+ | [[zh:植物]] | ||
+ | [[zh-classical:植物]] | ||
+ | [[zh-min-nan:Si̍t-bu̍t]] | ||
+ | [[zh-yue:植物]] |
2007年8月24日 (金) 20:53時点における最新版
植物と呼ばれるのは、光合成をして、運動せずに生活する生物、あるいはそれに類似の生物をまとめる言葉である。広義には、動物でないものすべてを指す。
現代の分類学上の群としての植物については、植物界を参照。
概観[編集]
日常用語では、植物といえば、草や木のことであるが、少し広く見れば、動物以外の非運動性の生物である、という認識がされている。たとえば、ワカメやコンブは光合成をするし、キノコは地面から生えてくるから植物に見える。
学術的に植物とされる生物の範囲については、歴史的にさまざまな学説があった。
二界説の枠組み[編集]
アリストテレスはすべての生物を植物(非運動性であるか、感覚器を持つもの)と動物に分類した。リンネの分類ではすべての生物はベシタブリア界(後に植物界)と動物界に分けられた。これが、一般の認識における植物と考えていいと思われる。
当時は無脊椎動物や藻類、原生生物に関する知識が薄弱だったが、それらについても研究が進むにつれ、このどちらかに振り分けられた。
5界分類以前の古い2界分類等では、シダ植物、コケ植物、種子植物の他に、以下のグループが植物に属していた。
これらをまとめてみると、植物の特徴は、以下のようなものである。
実際には、これらの特徴のどれかを持てば、植物と見なされる可能性があった。むしろ、動物でないものは植物と見なした、といった方がよいかも知れない。
現代の立場から考えれば、動物界に組み入れられた生物群が、ほぼ単系統のまとまったものであった分だけ、残りの植物界が、雑多な群の詰め合わせになってしまったとも言える。
新しい枠組みの中で[編集]
微生物が発見されるまでは、藍藻やキノコを植物と見なすことにさほどの違和感はなく、このまとまりが疑問なく受け入れられていた。しかし、様々な生物が発見され、その性質が知られる内に、2界説の枠組みに疑問が投げかけられるようになった。具体的には、細菌類と藍藻類は原核生物であるからモネラ界へ分けられ、菌類は退化した植物ではなく、独自の進化を遂げた生物と考えられることが多くなった。この傾向を決定づけたのが、ホイッタカーの5界説であった。しかし、この段階でも、藍藻類を含めた光合成生物が、一つの系統的なまとまりを形成するという考えは暗に認められていた。
それが崩壊したのは、分子遺伝学的情報が利用可能になったこと、原生生物各群の研究、特に微細構造の解明が進んだこと、そういった中から、細胞内共生によって、多様な原生生物が独自に藻類化したらしいことが明らかになったためである。
たとえば、ミドリムシ類は緑藻類と同じ光合成色素を持っている。したがって系統上は近いものと考えることができたわけである。しかし、近年の考えでは、これは全く系統の異なった原生生物が緑藻類を取り込み、自らの葉緑体としたものだと考えられている。つまり、光合成能力は、その生物の系統とは関係なく得られると考えられる。したがって、現代では、藻類というまとまりに分類学的意味を見いだすことはできなくなってしまった。
このような理由により、現代では植物界は、種子植物、シダ植物、コケ植物という陸上で進化した互いに近縁な群と、それと直接の系統関係があると思われる群のみを含めるものとなって言う。原生生物に位置づけられた藻類は、それぞれに藻類というくくりではなく、藻類を含む原生生物として見直しが進んでいる段階である。
現在も使われる言葉として[編集]
ただし、現代においても古典的な、広い意味での植物という語はそれなりの役割を担っている。動物と植物は我々の持つ生物の類型として、いわば動の動物と静の植物という、対立した生き方を示す言葉でもある。
また、光合成生物をまとめて言い表すには、やはり植物という語が用いられる。 たとえば光合成は生態系における生物生産の基礎をなすものであり、それを行う生物は、生産者と呼ばれる。これを説明する言葉としては、やはり植物を使うことが多いし、他に適当な言葉も見あたらない。そのような意味で、これからもこの言葉が使われる機会は少なくない。たとえば、海産の微小藻類は、現在の位置づけではほとんどが植物界ではないが、やはり植物プランクトンと呼ばれて行くと思われる。
関連項目[編集]
af:Plant als:Pflanzen an:Planta ar:نبات ast:Plantae bat-smg:Augalā bg:Растения bn:উদ্ভিদ ca:Planta cs:Rostliny cy:Planhigyn da:Plante de:Pflanzen el:Φυτόeo:Plantoj es:Plantae et:Plantae eu:Landare fi:Kasvi fr:Plante frp:Planta fur:Plantis ga:Planda gl:Planta he:צמחים hr:Biljke hu:Növény ia:Plantae id:Tumbuhan io:Planto is:Jurt it:Plantae iu:ᐱᕈᖅᑐᖅ/piruqtuq ko:식물 kw:Plans la:Planta lb:Planzeräich lij:Plantae ln:Etɔɛlɛ lt:Augalai lv:Augi mk:Растенија ms:Tumbuhan nah:Tlanelhuayōmatiliztli nds:Planten nl:Planten nn:Plante no:Planter nrm:Pliante oc:Plantae os:Зайæгой pl:Rośliny pt:Plantae qu:Yura ro:Regn Plantae roa-tara:Regnum Plantae ru:Растения scn:Plantae simple:Plant sk:Rastliny sl:Rastline sr:Биљке sv:Växt sw:Mmea th:พืช to:ʻakau tr:Bitkiler uk:Рослини ur:نباتات vi:Thực vật yi:פלאנץ zh:植物 zh-classical:植物 zh-min-nan:Si̍t-bu̍t zh-yue:植物